生まれて初めての「入れ歯」
[2016.7.26]先日、前歯が痛いから診てほしい70代の患者さんが来院されました。
他の歯医者さんで治療途中の前歯に大きな虫歯があります。これが痛みの原因でした。
口の中には4本の歯が残っています。患者さんは、入れ歯を入れていませんでいた。
私は歯が痛いから、入れ歯を入れていないのかとおもっていました。
実はこの患者さんは、これまで入れ歯を入れたことがないそうです。
上下で計13本しか残っていませんので、すでに15本抜けているわけです。
患者さんに理由を聞くと「歯医者が嫌いなの」とおしゃいました。
でも、今回はご家族に「見た目も悪いから何とかしたら」と言われ、意を決して入れ歯を作りに来られました。
実は、このような方は入れ歯を作るのが、とても難しいのです。
通常歯は1本ずつ抜けます。一気に15本も抜けることはありません。
1本抜けたら1本の入れ歯、3本抜けたら3本の入れ歯というように徐々に入れ歯は大きくなります。
その過程で入れ歯に慣れていくのです。
しかし、この患者様は70歳にして初めての入れ歯、しかも15本分の入れ歯です。
大きな入れ歯のため慣れるのに時間がかかる可能性があります。
このような方やかみ合わせが大きくずれている方には治療用義歯を作り、最終的な入れ歯を作成します。
左が最終入れ歯で、右が治療用義歯です。
この右の入れ歯を使用しながら、かみ合わせの調整や違和感がないかどうかを確認するのです。
最初から最終入れ歯を作り、もし慣れるのに多くの調整を必要したとすると、入れ歯はかなり汚くなってしまいます。
治療用義歯で十分調整し、しっかり使用できるのを確認してコピーするかのごとく最終入れ歯を作製します。